ヨガポーズ解説<ポイントと効果> (1)
太陽礼拝で行う立位のポーズ「タダアサナ(山のポーズ)、ウタナアサナ、アルダウッタナーサナ、チャトランガダンダアーサナ、ブージャンガアサナ(コブラのポーズ)ウドゥバムカシャバーアサナ(上向き犬のポーズ)」についてポイントを押さえた解説を行います。
想像力豊かなポーズ解説
タダアサナ
気を付け!のポーズ。いつものようにまず立ってみましょう。
ここで足の開き方とかおなかの引き込み具合とか・・最大の安定感を探すこと。
つまり、急に突き飛ばされてもなんとか立っていれるくらいの安定感。
けど、ガチガチになってはダメ。
見た目静かに柔らかく、けど倒せないヤツになること。
次のポーズに移る時に息を吸って手を挙げて、次へ行きましょう。
ポイント・・
・足の開き方
・足先の向きを調整する
・膝をかすかに曲げ伸ばし曲伸具合
・胸を引き上げる
・下腹部の力の入れ具合。
・腕が体側で脱力
・あごのひき方
・目線正面
効果・・
・ 正しい姿勢を理解する
・ 重心を知る
・ 呼吸を整える
・ 足の裏の使い方に目覚める
これ、すごく単純なポーズに見えて
いちばん正解を探しにくいポーズでもあります。
足幅とか重心の調整が重要。
難しく考えすぎてバランスがおかしなことになることもあるので、
あまり頭でっかちにならずにやってみてほしいと思います。
ヨガはいつもこのポーズに始まって
このポーズに終わるっていうくらいメジャーなポーズ。
呼吸を整えて自分に集中しましょう。
そしてからだの状態をスキャニングするように今日の自分の調子を確認。
からだのゆがみとかストレスの状態に敏感な人は良いけれど、
そうでない人はそういった健康への意識がないまま
生活していることも少なくないと思います。
タダアサナで5呼吸するだけで、自分の姿勢や呼吸の有り方がわかります。
猫背になっていたなとか、緊張で呼吸が浅くなっていたな・・とか。
タダアサナ=プチ健康診断だと思って毎日1回実践しましょう。
このようにタダアサナをしてみるとわかることがいくつかあります。
呼吸を深くしようとするけれどうまくいかない・・
そんな時は交感神経が優位になっている可能性があります。
交感神経は「よしっ!やるぞ!」といった
戦闘モードの時に優位になる傾向があります。
プレゼンをしているとき、遅刻しそうなとき、
試合を見ているときなどが交感神経が優位になるためです。
この交感神経が優位になりすぎると、疲れが取れないとか、
不眠とか、動悸がするなどといった不調が現れます。
自律神経の乱れといわれる症状がそれ。
そんなときは副交感神経にもう少し頑張ってもらい、
しっかりと休める状態を作ってあげないといけません。
特に息を吐くというところに意識を置いてみましょう。
しっかりと息が吐けるようになると副交感神経が働き始めます。
吸うことへの意識はいったん置いておいて吐くことに集中しましょう。
さて、深ーく息を吐いて始めましょう。
ウタナアサナ
基本的にはタダアサナから入ることが多いポーズです。
タダアサナで「ばんざーい」して伸びあがった後に、大きく息を吐きながら
「でっかいお礼」で前屈をします。そこからは上半身最大の脱力。
「どうも~ペコリ」レベルではなくて、深々と反省する・閉じる感じ。
頭の先が遠くを通って体が二つ折りになって
足先まで来るくらいのイメージです。
ポイント・・
・足幅は腰幅くらい。
・膝裏を固めず柔らかく。
・上半身は重力に任せてブラリ。
・首や肩も力をぬく。
・目線は足の間からのぞいたうしろ側。
・足裏の重心は親指根っこ。
・腰がクッと上がった状態。鉄棒にぶら下がってる感じ。
効果・・
・ リフレッシュ
・ 精神集中
・ 首のストレッチ
・ 全身の柔軟性
とても深いリラックスが得られるポーズ。
上半身の脱力を目指すポーズでもあります。
体をふたつに折りたたむことを目指すと
どうしても無理と我慢が生じてしまうので、
膝はしっかりと緩めて
上半身の力が完全に抜けた脱力状態を目指してほしいと思います。
ヨガのポーズは何を優先順位第1位にするのかで
ポーズの効果や目的が異なってしまいます。
柔軟性競争をしているわけではありません。
効果・目的をしっかりと理解して練習してみましょう。
そうすれば人によってポーズの形が異なっていても
大筋効果・目的における間違いはありません。
私はこのポーズが大好きです。
アイデアに煮詰まってきたり、
考え事でパンクしそうになったとき、焦っているときはこれ。
不要なアイデアや意識が頭の先から
ポトリポトリと落とされていくような気持ちにさえなります。
また、肩こりにも大変効果があります。
重たい頭をぶら下げることで疲れた首筋や肩を休めることができます。
腕を組むとよりリラックスできるでしょう。
息を吐きながら深めてみてください。
アルダウッタナーサナ
タダアサナ→ウタナアーサナ→アルダウッタナーサナと
入ることが多いポーズです。
なのでウタナアーサナがちゃんとできていることが大事。
ちゃんとできていることを前提で説明します。
まず背筋や肘や膝を伸ばす。
伸びるところは全部伸ばす。これが肝心です。
もう一段階ピシッとするために目線を前に向けて最大の伸びを感じましょう。
さらに欲張るなら・・
目線の先に目標があって絶対叶えてやる!って思うことです。
ポイント・・
・膝を緩めること。
・手が床にしっかりついていること。
・前方方向に伸びようとすること。
・目線は遠く前を睨むこと。
・肩をひくこと。
効果・・
・ 全身のストレッチ
・ 足裏の強さ
・ 重心を知る
強く強く伸びを感じるポーズです。
自分の体にあるラインは全部伸ばしてやると意気込んでも良いでしょう。
最大限の伸びを得るために目線にも注意をします。
ヨガを腰痛予防として愛用する方も多く、
私もたくさんの腰痛のお悩みを聞いてきました。
腰が痛いという方は全体的に体が縮んでいることが少なくありません。
腰だけにフォーカスするのではなく、
全身をもう一回りくらい大きくするイメージで伸ばしていく。
背骨は特に、たくさんの骨の連結で出来ています。
ですから、体を伸ばしてあげるとその骨と骨の連結部に隙間ができます。
隙間には神経がたくさん通っていて、
この空間が狭まると神経が圧迫されて痛みを伴うことがあり、
それをヘルニアなんて言うのです。
ヨガでは骨と骨の隙間を広げていきます。
同時に縮こまった筋肉をほぐして筋肉で拘束していた骨が
自由になるようにアプローチします。
ここまでイメージしてもらえたら、ほら、
アルダウッタナーサナのやり方が変わってくるでしょう?
チャトランガダンダーサナ
二段階の動きが伴うポーズ。腕立ての始まりのポーズからスタートします。
この始まりのポーズにおける重心がカンジンカナメ。
気持ち上半身を前方に突き出して重心を前方にしておくことが重要です。
イメージしてみてください。腕がテーブルの脚です。
テーブルの脚がテーブル台の中央寄りについてる感じ・・
ここから肘(テーブルの脚)を折りたたんでいきます。
腕立て伏せみたいにたたむと自衛隊の訓練か!ってくらい耐え難いもの。
だから、肘を胸の下に引き込む感じでたたむと良いでしょう。
システムキッチンの戸棚についてる収納棚の動きをマネてみてください。
なめらかに楽にできるというのが正解です。
ポイント・・
・重心が前下がりで始めること。
・腕立て伏せでは全くないこと。=肘は横ではなく体側に引き込む。
・肩甲骨をずっと寄せたまま。
・腹筋や背筋を使う。
・地面を強く押していることを忘れない。
効果・・
・ 腕と体幹の強化
・ 腕の使い方を学ぶ
・ 重心を知る
最大級に難しいポーズ。私にとっても永遠のテーマかもしれません。
というほど、その日の体の状態や調子によって
ポーズのしっくり度が違ってってきます。
このしっくり感の違いは重心にポイントがあります。
ヤジロベーをイメージして、
軸がどのあたりにあるのかを自分の体で感じてみましょう。
このとき軸=腕になるのだが、軸がセンターにあるとうまくいきます。
肘が伸びた状態のときに軸の調整をしてから始めてください。
よくある失敗が軸が下半身寄りにあるときです。
この場合肘をまげて下がってくるときにやたらとツライ・・
軍隊の腕立て伏せ状態になってしまいます。
軸がセンターにあるときは、
肘という軸を押し込むための圧=体重がかかるので
とてもスムーズに肘が体の下へと収納されます。
決して肘は横にでっぱらないこと。
脇がひらかない(パカパカしない)ようにしましょう。
大げさに言うと脇はピタッと閉じられて真空状態を守ってください。
言い換えれば体側のラインから膝が横に出てはいけません。
もう一つのポイントは肩甲骨です。これが開いていてはだめ。
肩甲骨が開くと方が丸くなって猫背になる・脇が開きます。
しっかりと肩甲骨を寄せて固定し、
体幹の強さを利用したほうがポーズは安全で楽になります。
これがうまくいけば感動もの。なんてスムーズでエコロジー。
人間の体の性能の良さを感じてもらえるはずです。
ブージャンガアーサナ
チャトランガダンダーサナ から起き上がってくるポーズです。
前の方(上・垂直方向じゃない)横軸方向の前方に
巨大な掃除機があって頭が、からだが吸い込まれる!って感じでしょうか。
簡単に言うと、上じゃなくて横の伸びが大切です。
ポイント・・
・上じゃなくて横(前方)への伸び。
・軽く肘をゆるめること。
・脇をしっかりしめる。
・肩をさげて肩甲骨寄せる。
・腰はひっぱって伸ばす。
効果・・
・ 腰の伸び
・ 胸が開く
・ 呼吸が深くなる
・ 勇気がわく
頭1つ分”突き出してるな”くらいでいいと思います。目立っていいのです。
つむじで挙手するような感じを探してみましょう。
ここでゆっくり鼻呼吸で5カウント。呼吸が涼く感じるはずです。
形だけにとらわれると必ずって言うほど腰をいためるポーズになります。
気を付けてほしいポーズです。
腰にプレッシャーをかけないためには、手(腕)の力が必要になります。
手で床をしっかりと押して腰が自由になることを確認しながら行います。
また同時に方向性も重要。「どっちにむかって伸びるのか」です。
背骨はなめらかな曲線を描いて斜め前方へ延びます。
この写真(私)はそもそも体が柔らかいので、
頭が真上を向いてしまっていますが、
顎をひいて頭頂は斜め前方にしてみましょう。
背骨に圧迫がなく気持ちよく伸びるところが正解です。
とにかく、手の力を使って背骨をより長く伸ばす!ことを目指してみましょう。
ウドゥバムカシュバーアサナ
ブージャンガアサナの最強バージョンと思ったらだいじょうぶです。
斜め上にある巨大掃除機の中に
みぞおちから上を吸い込まれに行っている状態です。
自分から行くこと!足の甲で踏ん張って押し出す!
ポイント・・
・腰や背骨を詰めないこと。
・足先からつむじはより長く。
・伸びる方向は斜め前の上方。
・最初から上を見ないこと。
・全部が伸びて完成してから上を見る。
効果・・
・ 胴体の強い伸び
・ 腕の強化
・ 勇気
力強いポーズだけど上を気にしたらダメ。高さじゃなくて長さ!!
どこまで伸びることができるかの長さ勝負です。
からだ最長になったらゆっくり呼吸を5カウント。呼吸も長ーく。
ブージャンガアサナからさらに腕の力で前方へ体を押し上げた状態です。
腰や首に負担がかかっているようなら方法が間違っています。
写真のポーズは首が折れているのでここまでは求めません。
(目線が正面で少し顎を引いた状態でも十分です。)
腰や首などの背骨全体がしっかりと伸びることを目指します。
前にも説明した通り、背骨はたくさんの骨の連結で出来ています。
この骨と骨の隙間を広くとってやることを
イメージして引き延ばしてみましょう。
足の甲で強く床を推すことでより背骨は伸びていきます。
何はなくても地面に着地しているところ(手と足の甲)で強く押す!!
さらに斜め前方へ背骨が引き抜かれていくようなイメージをします。
魚の背骨を引き抜くイメージです。
筆者 株式会社アヤボディアーキテクチャー代表取締役 橋本彩
「生活にフィットするヨガを」を理念にヨガインストラクター養成校を経営。
2007年以降、卒業生は数千人を超えました。卒業生が今のヨガ界をリードしています。