アシュタンガヨガを知る
アシュタンガヨガは伝統的なヨガのスタイルです。アシュタンガヨガの練習方法や効果についてお話していきます。アシュタンガヨガの背景にはヨガの歴史が色濃く関係しています。その背景を知るとポーズ練習がもっと深く・充実したものに。
アシュタンガヨガを知る
アシュタンガヨガの歴史
アシュタンガヨガは正式名称をアシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガとも言い、1915年にインドで生まれたシュリ・K・パタビジョイス(以下ジョイス)によってつくられたヨガの流派です。
ふるさとは南インドバンガロール州のマイソール市という地域でそこにはジョイスによってつくられたアシュタンガヨガを学ぶスクール、アシュタンガ・ヨガ・リサーチ・インスティチュートがあり今でも世界中からたくさんの生徒が訪れています。
世界でのアシュタンガヨガの人気も高く、現代ヨガの主要流派としてアイアンガーヨガ、シヴァナンダヨガと並び現代3大ヨガとも言われています。
1990年代にはアシュタンガヨガをベースにした「パワーヨガ」が、アメリカでブームとなりたくさんのヨガのスタイルにも影響をもたらしています。
また、本家のスクールはリサーチ・インスティチュート(研究所)という言葉が表す通り、もともとジョイスはこのスクールをアシュタンガヨガが精神疾患やがんなど、あらゆる病にどのような効果をもたらすのかを研究する「研究所」としてつくったと言われています。
スクールの名前からもアシュタンガヨガがもたらす効果や大きな可能性を感じさせてくれますね。
なお、2009年にグルジがお亡くなりになられてからは、お孫さんのシャラート・ジョイス氏がスクールのディレクターを努め、たくさんの生徒に向けてレッスンを行っています。
アシュタンガヨガの特徴
シークエンス
アシュタンガヨガはシークエンスというポーズの練習メニューが決まっており、生徒は決められた順にそのポーズを練習していきます。
使用されているシークエンスは何千年も前に書かれた「ヨガ・コールンタ」と呼ばれる、古いヨガの経典に書かれていたものがベースになっています。
ヨガ・コールンタはヨガの歴史の中でもとても重要な経典になるので、アシュタンガヨガで使用されているシークエンスは効果や信頼性の高いものだとも言われています。
すべてのポーズは次のポーズの準備となるようなポーズが組み込まれており、ひとつひとつ前から順番に練習することで、段階を踏んで難易度の高いポーズにもチャレンジできるような流れになっています。
また、アシュタンガヨガのシークエンスには大きく分けて3つのシリーズがあると言われており(もっと厳密に分ける場合は6つのシリーズとなります)、シーリズ自体も前から順に練習していきます。各シリーズの名前や特徴は以下の通りです。
プライマリーシリーズ(初級シリーズ、ファーストシリーズ)
→シンプルな立ちポーズ、座りポーズ中心。身体の浄化、身体の歪みの矯正。
インターミディエートシリーズ(中級シリーズ、セカンドシリーズ)
→後屈ポーズが増えてくる。神経器官、エネルギー経路の浄化。
アドバンスシリーズ(上級シリーズ、サードシリーズ)
→ハンドサポートや逆転ポーズが増えてくる。全てより深い身体と神経器官の浄化。
なお、一般的なスタジオのアシュタンガヨガクラスはほとんどの場合プライマシーシリーズが行われており難易度の高いポーズを行わなくても、クラスに参加いただける内容となることが多いです。
動く瞑想
アシュタンガヨガは流れるような動きのフロー系のヨガで、その一つ一つの動きに集中していくことで雑念が取り払われ心が落ち着いていきます。
そのためアシュタンガヨガは「動く瞑想」とよく表現されています。
昨今「マインドフルネス」という呼び方で瞑想や座禅などへの関心が高まっていますが、アシュタンガヨガは運動しながらも瞑想の効果を得られるような一石二鳥のヨガの流派とも言えます。
ポーズができてもできなくても、執着しない
アシュタンガヨガはフロー系のヨガです。
流れるように動いていくことが重要視されているので、ポーズがうまくとれなくてもその瞬間に留まらず次のポーズに進んでいきます。
ポーズは主に5呼吸キープして、次のポーズへと移ります。ポーズのつなぎ目には太陽礼拝の動きが使われ、流れるように動いていきます。
身体が固かったりしてポーズに自信がない人ほど、ポーズの細かい崩れにフォーカスされないアシュタンガヨガは参加しやすいヨガの流派とも言えます。
アヤボディアーキテクチャーのアシュタンガヨガインストラクター養成講座のカリキュラムhttps://www.aya-bodyarchitecture.net/wp-content/uploads/2024/10/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%80%80%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%92%EF%BC%94%E5%B9%B4%EF%BC%99%E6%9C%88%EF%BC%93%E6%97%A5%E6%9C%80%E6%96%B0.docx-HP%E7%94%A8.pdf
アシュタンガヨガインストラクター養成講座は年数回の開催です。3.5時間×5回の受講で資格が取得できます。
練習の三本柱
「アシュタンガヨガは難しいポーズが多いので、初心者の自分にはハードルが高い。。。」そんな声を聞くことがあります。
確かにアシュタンガヨガの中で最も目につきやすいのは、一見アクロバティックにも見えるさまざまなヨガのポーズかもしれません。
しかしながら、アシュタンガヨガで重要視しているのはポーズの完成度ではなく以下の3点です。
練習中はポーズの良し悪しにとらわれず、この3点に集中して練習をしましょう。
呼吸(ウジャイ呼吸)
アシュタンガヨガではウジャイ呼吸と呼ばれる力強い深呼吸をしながら、そのときの呼吸音に耳を傾け続けます。
ウジャイには「勝利」という意味があり、ウジャイ呼吸は「勝利の呼吸」と呼ばれています。
自分の呼吸に耳を傾けることは、いくつかの意味がありますが第一に自分の心が、あちらこちらにさまよい出ていかないようにさせる意味があります。
私たちの心というのはとてもさまよいやすいもので、何かをしながらも心ここにあらずで色々な妄想や考え事をしています。
そのせいで過去に起こったことを後悔したり、まだ見ぬ未来に起こるかもわからないことを妄想したりして不安になったりと自分の心が今この瞬間に集中していないせいで、私たちは心にたくさんの苦しみを感じています。
しかしながらアシュタンガヨガでは呼吸音を聞く練習を通して、今この瞬間の自分にだけ集中する力を育んでいきます。また、呼吸の音を聞くことで自分のポーズの状態がよく分かるようにもなっていきます。
呼吸が短く激しかったり、止まっていたりすると無理をしすぎている自分にも気づいてあげられるようになります。
ちなみに、アシュタンガヨガのウジャイ呼吸は大きな音を出しやすくするため、厳密にはノドの奥(咽頭蓋)を少し締めるような使い方をして呼吸をしますが、練習を始めたてのころは、このノドの奥を締めるという感覚が掴みづらく難しく感じるかもしれません。
ジョイス自身は、アシュタンガの呼吸は「力強い自由な呼吸だ!」と表現していたという話もよくありますので、慣れないうちは難しく考えずとにかく鼻から大きな深呼吸ができていれば十分でしょう。
視線(ドリスティ)
アシュタンガヨガではポーズを行っている時の視線の位置がすべて決められています。
視線の位置も心と深い関わりがあると考えており、視線をキョロキョロと動かすことで不要な考え事が浮かび、自分自身に集中しづらくなると考えています。
ジョイスも指導中はドリスティを一番厳しく指導していたという話があるほど、アシュタンガヨガでは重要視されているポイントです。
アシュタンガヨガにおいて定められているドリスティは全部で9つで、ナヴァ・ドリスティと言われ以下のような位置になっています。
・ナサグライ ドリスティ(鼻の先)
・アングスタ・マ・ディャイ ドリスティ(親指)
・ブローマディヤ ドリスティ(第三の目)
・ナビ・チャルカ ドリスティ(おへそ)
・ウルドヴァ ドリスティ(空)
・ハスタグライ ドリスティ(手)
・パダヨラグライ ドリスティ(つま先)
・パールシュヴァ ドリスティ(左遠方)
・パールシュヴァドリスティ(右遠方)
バンダ
バンダは「錠」や「封」を意味し、ヨガでは身体(筋肉)に力を入れるテクニックとして使われます。
バンダを行うことで身体を効率よく使えるようになるため、ポーズが安定したりケガのリスクを低下させ、身体のエネルギーを内に留め増やすことができると言われています。
主に以下の3つのバンダがあります。
・ムーラ・バンダ(骨盤底筋の引き締め)
・ウディヤナ・バンダ(下腹部の引き締め)
・ジャーランダラ・バンダ(喉の引き締め)
どのバンダをいつどれだけの力で使うかはポーズや状況によって異なるのですが、まずはそれぞれのバンダの感覚を掴むことが大切になると思います。
特に使うのはムーラ・バンダとウディヤナ・バンダ。とても多くのポーズで大切になってきます。
ヨガを始めたばかりの方はよく感覚がわからないかもしれませんが、身体に大きな軸が通ったような感覚になり、バンダが行えると出来るポーズも増えてきます。だんだんと身体内部の感覚を研ぎ澄ませてみてくださいね。
練習の頻度
アシュタンガヨガは伝統的には週6日の練習をおすすめしています。お休みしてよい日についてですが、新月と満月の日はお休み。
私たちの身体は月の満ち欠けによってバランスを崩す傾向があり練習に適していない状態だと考えていからです。また、発熱している時、女性は月経の際は最低3日はお休みするようになっています。
練習を始めたばかりの頃は、練習の基盤を確立するための特に大切な時期です。ヨガは続けることが一番のポイントになりますので、10~15分の練習でも結構ですからなるべく継続して練習ができるよう、少しづつライフスタイルを整えていきましょう。
「レッドクラス」と「マイソールクラス」のちがい
アシュタンガヨガを行う上で知っておかなければならいのが、アシュタンガヨガには「レッドクラス」と「マイソールクラス」があるということです。
レッドクラスとは
レッドクラスのレッドは「Lead」→導くを意味しており誰かに導いてもらいながら行うレッスンです。
つまりヨガインストラクターのインストラクション(誘導)のもとカウントやポーズ名が言われ、生徒はその指導どうりに合わせて動いてくクラスです。
レッドクラスに関してはいわるゆ多くの方がイメージするような、一般的なヨガクラスをイメージしておけば大丈夫でしょう。
マイソールクラスとは
マイソールクラスは、先生が立ち会いのもと個人個人が自主練するようにように行われるクラスです。
スタジオ内には複数の生徒が練習していますが、それぞれのペースで自分でポーズを覚え練習しておりヨガインストラクターは一人一人に必要な指導を見極め本人に伝えてたり、身体を触ってポーズの補正(アジャスト)をしてくれます。
初心者にはマイソールクラスがお勧め
初心者の方にとっては、「マイソールクラスは敷居が高い」「マンツーマンは緊張する」「出来ないままだとインストラクターに迷惑になるかもしれない」など、様々な理由から「マイソールクラス」よりも「レッドクラス」に出た方がいいとイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、個人的には自分にあったペースで教えてくれるマイソールクラスこそ初心者の方には参加していただきたいと思っています。
レッドクラスではヨガレッスンを中断して質問しづらいことも、自主練スタイルのマイソールクラスでは質問しやすい空間になることもあるので、初心者の方や自分のペースで練習したい人には特におすすめのスタイルです。
また、マイソールクラスではじっくり正しい、そしてその生徒にあった指導が受けられます。
人はそれぞれ体力はもちろんのこと骨格から違います。
大人数のヨガレッスンにおけるヨガインストラクターの声かけというのは、あくまで「全体」へのアドバイスであり、そのアドバイスが全員に当てはまるわけではありません。
マイソールクラスの様に、自分にあったアドバイスは怪我の防止にもなり、より健康状態への近道と言えるでしょう。
なお、現在のヨガスタジオではマイソールクラスよりレッドクラスの方が開催が多くなっていますので、ご自宅から通える範囲にマイソールクラスがありましたらぜひ参加されてみてください。
アシュタンガヨガの効果
アシュタンガヨガは、ポーズをとる順番や視線の位置も決められているため、自然と集中力が高まり、心を落ち着かせたりストレスを軽減したりする効果が期待できます。
また、他のヨガに比べて運動量が多いため、血行を促進し、脂肪燃焼や筋力・代謝のアップといったダイエット効果も期待できます。
美容意識が高い女性にも、リラックスしたヨガだと物足りないような男性にもおすすめのヨガの流派となりますので、アシュタンガヨガが未経験の方はチャンスがあればぜひ受講されてみてください!
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真筆者 井上 静 アヤボディアーキテクチャー名古屋校主任
全米ヨガアライアンス 200・IYCキレイになるヨガインストラクター・My soul 8 ベーシックヨガインストラクター・ナンシーギルゴフ アシュタンガヨガアジャストメントクリック修了・OSHO meditation center 10days cause修了(インド/マイソール)・アシュタンガヨガ集中講座修了